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保健所の「コロナ戦記」 TOKYO2020-2021

関なおみ(著)
保健所の課長級の公衆衛生医師である著者の新型コロナ第5波までの経験を綴ったもので、一言で言えば、(興味深いの意味で)面白くないわけがない本である。

感染症をいかに国内に入れずに、国内に入ってしまった時は極少ない感染者をいかに抑え込むかという発想で作られた制度、組織が、どのように想定外の感染爆発に対応していったのかという記録である。

二類感染症と五類感染症の話もでてくるが、感染症の分類をどうするかという話は、この感染症に対してどのように対応していくのかという考え方が先にあっての話である。
2020年の話として
> 1月28日、この感染症の病名を「新型コロナウィルス感染症(COVID-19)」とし、感染症法上の指定感染症に定め、当面二類相当として対応することが閣議決定された。
と書かれている。これによって、この感染症をどのように扱うかが決まったわけで、土光臨調以来の公務員定員削減と共に、COVID-19で保健所の人たちが地獄を見た起点である。

> 第2次世界大戦後、占領期の政策として、GHQ公衆衛生福祉局長であったクロフォード・F・サムスをはじめとしたスタッフが繰り返し強調したのは、専門家による技術行政の確立であり、「日本の公衆衛生が進歩しないのは、専門家の意見が専門家でない者によって、左右される仕組みになっているからである。これを改めなくてはならない」と主張していた。現在、この時と同じことが繰り返されている感が否めない。

その頃からの問題なのかと思いながら、著者の意見に同意見である。

新型コロナウイルス接触確認アプリ(COCOA)に対する辛辣なコメントは保健所の中の率直な意見なのであろう。
国のCOCOAを推進した部署からの指示が保健所まで届いていないのであろう。
逆に、保健所でとりあってもらえないのであれば、国の担当部署がCOCOAは止めますと宣言してくれた方がありがたい。

> HER-SYS自体のさらなる改良と(中略)国がインセンティブをつけるといった工夫が必要だろう
と書いてあった。
HER-SYSに限らず、使いにくかったら直し、仕事を頼むなら対価を払う、著者の意見は当然だと思う。

著者は医療機関に対して不満があるようだか、巻末特別対談として国立国際医療研究センター病院の大曲貴夫医師との対談も読める。
現場の医師の意見も聞けて、これも興味深かった。

保健所の「コロナ戦記」TOKYO2020‐2021 (光文社新書)

保健所の「コロナ戦記」TOKYO2020‐2021 (光文社新書)

  • 作者: 関 なおみ
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2021/12/14
  • メディア: 新書



2022-07-17 10:02  nice!(0)  コメント(0) 
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