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1100日間の葛藤 新型コロナ・パンデミック、専門家たちの記録

尾身茂(著)
著者達が、新型コロナウイルスに対処したときの話である。
当然のように興味深い。

素人には専門家というのは、何でも知っていて、間違えなくて、素人に分かるように教えてくれる人という位置づけなのだろう。
でも、それは幻想である。
専門家でも知らないことはあるし、素人に分かりやすい説明は不正確になりがちで、下手をすると嘘が紛れ込む。
役人に余裕がなかったためだと思うが、記者会見などで著者が説明役になってしまったため矢面に立つ羽目になったのが著者には不幸であった。
ある程度素養がある人たちには分かりやすい説明だったが、そうでない人の方が多かったであろう。

初期の被害を小さくできたのは著者や専門家の貢献があればこそであるが、最終的には、政治判断により専門家の意見を聞くのをやめて現在に至っている。
増えた医療費を削り、他の分野に回したいという政治判断なのだと思う。

今回の惨事で分かったことは、本邦の医療リソースは足りていないということである。
これは、平常状態でギリギリ回せる程度まで削っているから仕方がないことである。
将来の新たな感染症に備えるためには、普段からもっと医療リソースに投資していなくてはならないというのが一番素直な結論であるが、それを認めるのが嫌な人たちがいるのだろう。

この本には、高齢者の被害を小さくするためという言葉が何度もでてきた。
実際にこの新型コロナ対策として何度も聞かされた言葉である。
その反動が国民皆保険制度や医療費そのものに対する憎悪を煽る人たちに力を与えているように見受けられる。
コロナ禍を世代間の憎悪に転嫁し、煽り、医療費削減を目指している人たちがいるということだろう。

1100日間の葛藤 新型コロナ・パンデミック、専門家たちの記録

1100日間の葛藤 新型コロナ・パンデミック、専門家たちの記録

  • 作者: 尾身 茂
  • 出版社/メーカー: 日経BP
  • 発売日: 2023/09/22
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



2024-04-21 14:09  nice!(1)  コメント(0) 
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