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きまぐれエトセトラ

星新一(著)
1976年から1983年に発表されたエッセイをまとめたエッセイ集である。
全てで36編のエッセイからなり、軽い話から重い話まで、近況から肉親の話までどれもとても面白い。
40年ほど経っているのに古臭くないのが凄い。

『中国東北部の旅』は41年前の中国の記録であり、とても興味深い。
『父と翼賛選挙』に
> 戦前の内務省は全国を支配し、政権党に奉仕する機関になっていたのだ。
と書かれおり、それで戦後は内務省が解体され、政治家と役所が分離されたのかと感じた。
現在の内閣府が肥大化し戦前の内務省に近づいていること、内閣が役人の人事権を握ったことはその流れに逆行しているのだなと思った。
『映画「雲ながるる果てに」について』は昭和28年ごろに制作された。戦争末期の日本、動員された学徒兵たちによる、体当たり特攻機の物語で、鎮魂と反戦の祈りを込めた、リアリズムの映画だそうである。公開当時はそれがすなおに伝わってきたが、昭和40年のはじめごろにテレビで見たら恐怖映画の最高傑作になっていたそうである。
> 戦争の真の恐ろしさは、殺人、飢え、破壊、死が発生するからではない。全員がいつのまにか画一化された思考になり、当然のことと行動に移すことにある。
> 戦争体験を語りつぐことのむずかしさは、そこにある。みなが正気じゃなかったのだ。なぜ逃げなかったのかという、まともな質問には、説明のしようがない。
とのことである。
今の言葉にすると軽くなってしまうが、エコーチェンバー現象なのかなと思う。

最後の『学習・コレステロール』を読んで、著者が凝り性なことが良く分かった。
東大の大学院で農芸化学の研究をした人だけのことはある。

きまぐれエトセトラ (角川文庫)

きまぐれエトセトラ (角川文庫)

  • 作者: 星 新一
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2019/11/21
  • メディア: Kindle版



きまぐれエトセトラ (角川文庫)

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  • 作者: 星 新一
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2019/11/21
  • メディア: 文庫



2023-04-30 17:50  nice!(1)  コメント(0) 
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